2011年5月9日月曜日

結 婚

3年の年月が流れ、ポルトガル語も覚え、少しずつブラジルの事情も解るようになった頃にひとりの女性を愛するようになった。
まだ中学卒業まもなく、家で親の手伝いをしていた。田舎に住んでいる娘とは違って気品があった。それは学校を出たせいか、あまりおしゃべりせず、隠された宝石のようになお一層美しく見えた。私にはとても及ばない女性に見えた。たくさんの男性が結婚を申し込んだ。私も良く彼女の家に遊びに行った。彼女の気持ちも知らず叔母のカメ子さんを通じて結婚を申し込んだ。私は昼も夜も彼女のことを想った。
その頃は私も5アルケール*の土地を買い求めていた。500クルゼイロを2年で払うことが出来、私も古い移民と同様に土地を持つことが出来た。
結婚の話も始めは断られ、初めて失恋の苦い思いを感じた。心の苦しみを忘れるためになお一層本を読み、現在の悩みが人生にとって小さいことのように思われ、新移民の私にとって彼女は高嶺の花のように思われた。彼女の幸せを願うようになった。
突然結婚しても良いとの返事を持ってきた。私は有頂天になった。しかし母は、彼女の姉ふたりに子供がないことを気にしていた。せっかくブラジルまで来て子孫の絶えることは耐えがたいことだといわれたが、好きな人と結婚することが自分にとって幸せであることを母に言い聞かせた。
その後私は毎日のように彼女の家に行った。二人とも話すことは少なく、私が女性と付き合うことに慣れていない故でもあった。それでも会うことは楽しかった。
20001010日 

*編者註 アルケール:1アルケール=2.44ヘクタール

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