2011年5月8日日曜日

安 昭 様  -書簡-

クリスマスも近づき、お正月も近くに来た感じがいたします。日本も寒くなりまして皆様ご家族お元気でしょうか。先日、引き出しを整理したら、貴方からの古いお手紙が出てきて改めて読んだら懐かしく、また手紙にはワープロをこなしてもっと手紙をよこしてくれとありました。思い出すと今年の正月に出して以来、文通がないように感じます。沖縄の貴方の母上に良く手紙や電話して貴方のことも尋ね、沖縄に来ていたよと話されました。ご次男が貴方の後を継ぎ、博士課程を進んでいることも安勝から聞いております。お子さん達が自分以上に達することが出来れば、自分の励みにもなり生きがいを感じることでしょう。
今年はめまぐるしい国際情勢の中に日本も翻弄され日本も厳しく、政府も改革を掛け声だけで終わったような感じがいたします。私も同じで、経済の変化や穀物の相場に振り回され一年が終わったような感がいたします。
何時かのNHKドキュメントにありましたけど、チベットの山岳地帯に文化に取り残され、昔のままの自然と共に暮らす人々がおり、平和で暮らし、幸せに生活しているようで、自分たちが経済の変化を先に読み取り、遅れぬように新聞やテレビにすがることがいかがわしく思われます。
私も2005年は古希を迎えます。人生の3分の2以上をブラジルで過ごしたことになっています。食べ物もブラジル食や日本食、話す言葉もポルトガル語と日本語、物の考え方も日本的とブラジル的。しかし国籍はブラジル人ですけど消すことの出来ない日本人なのです。テレビで観る日本の景色は美しく、山裾にある村々の佇まいは昔ながらの家々が、その伝統を受け継いで生活しており、またお寺や神殿の建築は美しく、武士の時代に築かれた伝統文化を受け継いでいることは日本人に生まれたことを誇りに思うのです。
この国の人々も明るく馴染みやすく、人種差別がなく、たとえ経済的に差はあっても平等に話し合います。日本のように仕事によって差別することはありえません。
私は農場でよく一人になることがあり、物事を良く考えることがあります。俳句の中に、母の日に古希を迎えて母恋し、と詠まれたのがありました。私も同じで、自分を見守ってくれる誰かがほしいような気がして、貴方の苗さんに母の思いを寄せるのかもしれません。漢那家の女性はみんな苦労性の、波乱に生きた女たちだと思われるのです。美貌の故か、侍家なのでか、生い立ちが漢那の妾ゆえか、それでも孫達はみんなしっかりして有名人になりえているから頼もしい。
この度、ポルトガル語で川端康成の雪国が出版され、もう一度読んでみることにした。書かれている自然の描写や男女の会話が細やかに書かれていて、細やかに観察していることがわかるのです。でもなぜ自殺したのか疑問です。この国では宗教上、自殺は救われないと禁じています。日本では武士時代から美とされ、テレビでもよく見かけます。私は、弱い人間だといいたいです。
この手紙を受け取る頃は新しい年を迎えているでしょう。
ご家族にご健康とご繁栄がありますようにお祈りし、新年の挨拶といたします。

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