2011年5月8日日曜日

読 書

ブラジルに移住した初期は友達もなく、言葉も解らず、ただ読むことが時間つぶしにもなり、また最良の友となった。
まず初めは、サンパウロに着いた時にカメ子叔母が小遣いをくれて、宮本書店で「岩窟王」を買った。後に判ったが、ブラジルではコンデ・モンテ・クリストとよばれていた。若い人の正義心を燃やした。
すぐ祖父が小波津喜寛さんの勧めで南米時事の新聞を取ってくれた。祖父は無学で読めなかった。今思うと読んだ記事を伝えればどんなに喜んだことだろうと感ずるのです。誰にも知りたい欲望はあります。一面記事は日本事情、二面がブラジルの事情で三面がブラジルのコロニアのニュースでした。読者の書簡もありまして、全部読みました。読むのがないときは二度も読んでいました。その後廃刊になり、パウリスタ新聞になり記事は中道派で、負け組派とも言われていました。サンパウロ新聞は勝ち組派と呼ばれていました。現在発行されているのはサンパウロ新聞と日系新聞で、主に日系に読まれているようです。
それ以外には、私の植民地に日本語学校がありまして佐藤先生がいて、彼はたくさんの本を所有し、毎日のように彼の部屋へ行き、本を読むのが常でした。そのなかには児童文学集やツルゲーネフの「初恋」、「煙」など、また「アンネの日記」や日本の特攻隊員の日記、この二つの日記は、純情な若い人の死と向き合った心の葛藤を記したもので、読む人の心に響くものがありました。その他にも山本全集の「波」も印象に残っています。また川端康成全集を読み、その美しい文章が心に残っています。武者小路実篤の全集も良かった。三浦綾子の小説「塩狩峠」も印象に残る。それに文芸春秋を長年読み、特に印象に残るのは山本七平の書いたもので、物の考え方が日本人離れしていて考えさせられた。
その後家庭にテレビが入り、殆どの時間がテレビに取られてしまい、ブラジルの新聞を読むのがやっとで、読書は遠のいています。
最近読んだ本には「不撓不屈」があり、日本の官僚を徹底的に批判した、実際にあった事件を小説化したもので、読み応えがありました。
本は人間のよき友であり、常に何かを教え、また著者の心を覗き見することが出来ます。❀

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